《珍味》スズメバチの捕り方と食べ方

動植物

蜂の子はフォアグラよりおいしい、という人もいるくらい貴重な食材である。幸運にもスズメバチが庭に大きな巣を作ったので捕ってぎっしり詰まっていた子を心行くまで味わった、という話。

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スズメバチの大群が攻めてきた

「たいへん!たいへん!」
夜、居間で娘たちとテレビのニュースを見ていたらタイ嫁が駆け込んできた。
「どうした、そうぞうしい」
「ハチがいっぱいでバイクが片付けられないのよお」
うちは隣のお婆ちゃんの家のターイトゥン(高床家屋の床下部分)にある部屋をバイク置き場にしている。
外に出しっ放しだとすぐに盗られてしまう土地柄だ。
バイクにしっかり鍵をかけておいても男四人がエッサホイサ担いで行くのだから油断できない。

ミツバチの巣は巣ごと蒸して食べる

ミツバチの巣は巣ごと蒸して食べる

彼女について行ってみるとターイトゥンの蛍光灯に百匹ほどのスズメバチハチがブンブン飛び回っていた。
「わ!なんだこれ。おまえ、また何かやっただろ」
「へっへっへ、棒の先にカマをつけて巣を採ろうと思ったんだけど、なかなか落ちなくて」
「ほら、あそこ」
庭の隅の使わなくなった犬小屋の中にスズメバチの大きな巣があった。
「おまえねえ、巣をカマで落として、それから先はどうするつもりよ。ハチはまだ巣の中にいるんだぞ」
「あら、そこまで考えてなかった。あははは」
これだものね。いつも勝手なことをやって、自分の手に負えなくなると人を呼ぶ。

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蜂の巣を突っついた大騒ぎ

北部の人たちは昔からスズメバチの子を食べ続けてきた。
市場では子の入った巣のひとかけが30バーツぐらいするからけっこうご馳走の部類である。
彼女は巣の中に蠢いているはずのハチの子に目がくらみ犯行に及んだわけだ。

スズメバチの幼虫を選別中

スズメバチの幼虫を選別中

周辺はハチの巣を突っついたような大騒ぎだった(本当に突っついたんだけどね)。
幸いハチは夜目が利かないので暗いところにいれば襲われない。
これが昼間だったら大変なことになったはずだ。

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スズメバチの巣を捕るのは簡単

キンチョールをハチめがけて噴射した。
普通のハチは殺虫剤に弱くすぐに死ぬのだけどこいつらはキンチョールの噴霧の中を平気で飛び交っている。
ふとキンチョールを見れば 「蚊、ハエ用」とある。
走って部屋まで戻り、「強力タイプ」を持ってきて吹きつけたところ、ぽとりぽとり落ちていった。
殺虫剤はタイの田舎の生活に欠かせない。
家は三種の殺虫剤を常備している。
環境汚染?
そんなこといってられるか。

普通は選別しないけどぼくは白が好き

普通は選別しないけどぼくは白が好き

飛び回るハチを始末した後、丸めた新聞を犬小屋の入り口に置いて火をつけた。
ハチの巣を捕るにはこれが一番である。
ただ、あまり火を近づけるとスズメバチの巣は燃えることがあるので気をつけないといけない。

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巣が捕れても油断するな

サッカーボール大の巣が捕れた。
その巣、まず、どうすると思います?
知るわけないですよね。蒸すんです。
放っておくと、数時間後にはサナギから孵ったハチが家の中を飛び回り、片っ端から病院送りになる。
このハチの毒は相当に強い。
家の隣のおじさんなんて頑健を絵に描いたような人なのだけれど、たった一匹に刺されただけで寝込んでしまった。

蒸し器に入れて巣ごと蒸す

蒸し器に入れて巣ごと蒸す

台所に巣を持ち込みみんなでいじり回しているうち、どこかに隠れていた新生児が一匹、ブーンと飛び立った。
「ワッ」
タイ嫁と娘たちは素早く隣の居間に逃げドアを閉めた。ぼくを残して。
ドンドン!(ドアを叩く音)
「おい、開けろ」
「はい、これ」
彼女はドアの隙間から蠅タタキを差し出した。
「頑張ってね」
またドアをピシャリ閉めた。
「お、おい」
このやろう、覚えてろよ。

台所だからキンチョールをかけるわけにもいかず蠅タタキでスズメバチと格闘だ。
まったく、タイにきてこんなことばっかりやっている。
おかげでずいぶん腕が上がりました。

スズメバチの子の食べ方

現地では蒸したハチの子をトウガラシと一緒に臼で搗いて辛子味噌(ディップ)にする。
こうすれば、少しの量で大勢が食べられる。
コンムアン(北部人)は食べ物にかけてかなりケチなので、ちびりちびり惜しみながら頂くのである。
潰したハチの子から滲み出た旨みが唐辛子の辛味とうまいぐあいに混ざり合い、本当にいくらでもご飯が入ってしまう。

節約するつもりで辛子味噌にしたのに、かえって米代がかかりそうだ。
ぼくは北部人じゃないのでしょうゆで炒った。
味は臭みのないレーバーのようなまったり系。
「ハチの子はフォアグラよりおいしい」という人もいる。
わかるなあ、その気持ち。
スズメバチの子にはヒスタミンが含まれているのであまり多量には食べない方がいいそうなのだけど、ぱかぱか食べちゃったぞ。
もし蜂の子のディップを味わって見たいと言う方は蜂の子の代わりにカシューナッツを使って見て下さい。
不思議なことに蜂の子のディップそっくりの味になります。

醤油をかけてフライパンで炒った

醤油をかけて炒ってみた

昔、テレビの黄金伝説で有吉がスズメバチ捕りに挑戦する企画があって、そこの人たちは親まで食べていたけれど、タイは親までは食べない。
日本も田舎の人はけっこうすげえな。

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田舎の人町の人

それからしばらくしてテレビでスズメバチのニュースが二つ続いた。
一つは、どこかのお婆さんがスズメバチの巣に近づき刺し殺されたニュース。
もう一つは、バンコクの人がそのニュースを見て怖くなり、屋根のスレートの隙間にあるスズメバチの巣の撤去をレスキュー・ボランティアに依頼したニュース(タイの警察はこんなことやってくれない)。
群集が見守る中、消防車で水を撒きながら完全武装したレスキュー・ボランティアの一員がガスバーナーで巣を焼いていた。

あーあ、もったいない。
タイ人でも町の人は巣の採り方を知らないらしい。
ぼくの村だったら気をつけていないと盗まれてしまうというのにね。
一緒にテレビを見ていた娘が、
「大げさ。うちのお父さんなんてパンツ一枚でとってきたわよ」
自慢そうにいったのがおかしかった。
おいしいけれど滅多に食べられない。こういうものを「御馳走」というのならスズメバチの子は間違いなく御馳走だった。
またスズメバチが巣をつくるのを心待ちにしています。

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