ネームは雲南からラオス、タイ北部、東北部にかけてよく見られる発酵食品。簡単、早い、うまい、経済的、であることからタイの人たちにこよなく愛されているネーム料理の数々。おいしいネームの食べ方について。
発酵酸肉、ネームの作り方
ネームは豚や水牛の肉を薄く切った皮とご飯粒を混ぜて発酵させたフナ寿司に近い発酵食品。
本来はバナナの葉で包むのですが、近年は丸く細長いビニールに詰められた工業製品が多いため、日本ではネームソーセージと呼ばれています。
日本でもおいしいまっとうなネームが食べたい、とお嘆きのあなた。
ネームはその気になれば簡単に作れますよ。
ネームの基本的な作り方
① 挽いた豚肉、皮、にんにく、塩、砂糖、ご飯、唐辛子、を混ぜよく捏ねる。
② ①をバナナの葉で包む。あるいはビニール袋に詰める。2、3日寝かしておけばできあがり。
*ネーム粉というのがスーパーなどで売られていて、これを使えば二十四時間でできあがるそうです。
飾りネーム《ネーム ソンクルアン》
ネームは生でも食べられます。
料理店ではスライスしたネームにピーナッツ、唐辛子、しょうが、ミント、ライム、パクチーなどを添えた、飾りネーム(ネーム ソンクルアン)が定番。
オードブルとしてよく出され、酒のつまみとしても大人気です。
生でも食べられるネームですが、熱を通した方が安心だしおいしいですよ。
ネームはレンジでチン、あるいは焼くか揚げるかして熱を加え、含まれている油脂を満遍なく行き渡らせてやるとうまみが引き立ちます。
*ネームを生で食べない方が良い理由 は《タイの生発酵ソーセージ?》ネームについての正しい情報 をどうぞ。
ネームの卵とじ《パット ネーム》
ネームの超定番料理です。
簡単。早い。うまい。経済的。
お母様方にとても愛されています。
家でもそれはもう頻繁に登場。
昨日もパット ネーム。
作り方を見ていたら、タイ嫁は調味料を一切使わず、にんにく、ネーム(チン ソム)、卵、ネギ、赤唐辛子、をただ炒め合わせただけでした。
ネーム自体に酸味、塩味、うま味があるのでむしろ何も加えない方がよいとのことです。
ずぼら派には嬉しい料理。
ネームの卵とじのレシピ
材料 1-2人前 調理時間 10分
・ネーム 150g(よくほぐす)
・卵 1個
・にんにく 4片(叩き潰す。または刻む)
・タマネギ 半個(適当に切る)
・万能ねぎ 2本(長めにぶつ切り)
・赤唐辛子 2本(斜め切り。またはそのまま)
・ナムプラー 大さじ 1/2
・白しょうゆ 小さじ1
・砂糖 小さじ1
作り方
・フライパンで油を熱し、刻んだにんにくを炒めて香りを立てる。
・タマネギ、ネームの順に炒め、ナムプラー、白しょうゆ、砂糖、で味付け。
よく混ぜ合わす。
・フライパンの端に炒めたものを寄せ、開いたスペースに溶き卵を流し込む。
・卵をかき混ぜ、固まり始めればすべてを一緒に炒め合わす。
・ネギ、唐辛子を加えさらに軽く炒めて完成。
ネーム炒飯《カオパット ネーム》
ネーム炒飯はネームを具にした焼き飯です。
タイの炒飯、定番の具は、豚、エビ、カニ。
どれもすっごくおいしいですよね。
でも、ほかに料理があるときはともかく、炒飯だけだと何か物足りなさを感じることがありませんか。
そういうときこそネーム炒飯。
味濃くまったりボリューミーなネームは炒飯にありがちな物足りなさ寂しさを補ってくれます。
*炒飯にネームの卵とじの残りものを混ぜ合わせて食べたところ、けっこういけました。
もしかすると最初から炒め合わすよりおいしいかも。
混ぜ混ぜネーム《ヤム クルック》
揚げたご飯、ネーム、豚の皮、ピーナッツを、ライム、ナムプラー、砂糖を加えて混ぜ合わせたヤム(俗称スパイシーサラダ)。
ご飯はケーンペット(レッドカレー)のペーストをまぶし下味をつけて揚げるのが特徴です。
揚げご飯混ぜネーム(ヤム ネーム カオ トード)とも呼ばれます。
これもまた酒やビールにとてもよく合いそう。
このヤムのほかに揚げご飯を混ぜない普通のヤム ネームもあります。
焼きネーム《ネーム ヤーン》
串に刺したネームを炭火で焼いた料理。
よく路傍の屋台で見かけます。
おかずにしても酒のつまみにしても抜群です。
でも、これよりおいしいのが熾火(おきび)焼き、チン ソム モック。
ネームは通常、ソーセージのように細長くビニールチューブに入っていることが多いですが、本来はバナナの葉で包んで作るもの。
この手のネームを北部では酸っぱ肉(チン ソム)と呼びます。
ようするに、バナナの葉で包まれたネームをそのまま炭の熾に突っ込んで焼いただけのざっかけない料理が熾火焼き。
これが本当に、うまい!
居酒屋に置けばヒット間違いなしのメニュー。
最高においしかったネームの熾火焼き
昔、遊び仲間のポン太に北部の家庭料理を食べさせる小さな小さな食堂へ連れて行ってもらったことがあります。
チェンマイの旧運動場裏手、簡素な家屋がごちゃっと密集しているところで、食堂というより知り合いの家の軒先に置いた縁台に上がりご馳走になっている感じ。
意外なことにその食堂、何を食べてもうまくてびっくり。
路地裏の五つ星です。
とりわけ目を瞠ったのがチン ソム モック。
チン ソム(ネーム)を熾に突っ込んで蒸し焼きにしただけなんですが、これが無茶苦茶うまかった。
それまでチン ソムは「ぼそっとした酸っぱい肉」といった程度の認識しか持っていなかったぼくがめろめろ。
打ちのめされました。
熾から取り出したチン ソムは熱々の湯気を立て、肉全体が皮や脂から滲み出てきた滋味に覆われてしっとり。まったり。もったり。むっちり。
そしてお焦げが香ばしくてなんともいえず良いのですよ。
チン ソムはモック(熾火焼き)に限る、と思ったのはそのときからです。
後日、家でも真似て何度かチン ソムを熾に突っ込んでみたのですがその店ほどおいしくはありませんでした。
こんな簡単なものにもそれなりのコツがあるんでしょうね。
チン ソム モックはオーブントースターを使って簡単に作れますよ(油が滴り落ちるので注意)。
でもおいしくできるかどうかは腕次第(笑)。
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