米粉を練った生地を熱湯に搾り出して作る生ビーフン、カノムチーン。タイ人のソウルフードといってよいくらいやたら食べられています。日本人には新鮮な生ビーフンの作り方、おいしい食べ方についての話です。
ビーフンと春雨の違い
ビーフン知ってます?
白く細いメンでよく春雨に間違えられるやつ。
地域によってはすごく馴染みがあるし、地域によってはまったく馴染みのない食品。
ビーフンと春雨の違いは原料。
ビーフンはうるち米。春雨は緑豆や芋のデンプン。
米から作るメンは日本ではビーフンだけ。
近年はグルテンフリー、小麦アレルギー回避の健康食品としても注目を浴びているようです。
タイの生ビーフン、カノムチーン
ビーフンといえば通常、米粉を練り熱湯に搾り出した後、乾燥させたは乾麺を思い浮かべるだろうと思います。
というかそれ以外のビーフン知らないですよね。
タイでは熱湯に搾り出した後、乾燥させない生のビーフン、カノムチーンがとてもよく食べられています。
まったく同じ物かどうかはわかりませんが、製法を見る限りカノムチーンは生ビーフンといってもよいのではないかと思います。
カノムチーンはタイ語で「中国の菓子」の意味。
でも中国とは関係がありません。
タイ中部に多いモン族の言葉が訛ってカノムチーンになった、という説が有力です。
もっともタイ北部ではカノムチーンではなくノムセンと呼んでおります。
中部の魚ベースのかけ汁ナム ヤー
カノムチーンは通常、辛い汁をかけて食べます。
かけ汁は地方によって様々。
これがカノムチーンを食べる楽しさでもあります。
バンコクを中心とした中部地方でカノムチーンといえばナム ヤー。
すり潰した魚の身をベースにココナッツミルクで煮込んだ汁です。
黄色い独特の色をしています。
入門編として無難なのはこのナムヤーでしょうか。
ヤーは通常「薬」の意味で使われますが、なぜナム ヤーと呼ぶのかはわかりません。
カノムチーン ナム ヤー今と昔では味が違います。
近年のナム ヤーはたいてい安価なテラピア(プラーニン)が使われていますが、昔は雷魚(プラーチョン)でした。
そのため、昔のナム ヤーを知る者には近年のナム ヤーは魚臭が強く感じられます。
日本では雷魚はまともな魚扱いされていませんが、白身で癖がなくテラピアよりおいしい魚です。
ご存じのようにタイにテラピアを持ち込んだのは平成天皇。
テラピアの普及はタイ経済や食料事情に大きな貢献をしたのは事実。
しかし、ナム ヤーほか雷魚を使う淡水魚料理とタイの川の生態系に関しては残念な結果になりました。
カノムチーンは様々な野菜や野草を添えて食べるのが楽しみであります。
ナム ヤーの場合は、刻んだ長ささげ、ゆでたゴーヤ、もやし、ヒメボウキ(メンラック)、キャベツなどと一緒に食べるとさらにおいしく頂けます。
北部の豚肉ベースのかけ汁ナム ギウ
カノムチーン ナム ヤーは魚ベースなのに対し、北部で一般的なナム ギウはミニトマトと豚挽肉がベース。
それに茶色い豆腐のような血の塊、乾燥納豆、乾したギウ(インドワタノキ)のシベなどを加えるため、独特の風味と食感。
色は茶色っぽく、黄色いナム ヤーとは全く異なります。
家でノムセン(方言)といえばこのナム ギウ。
もう何十年も食べ続けております。
からし菜の漬物(パッカードーン)、豚皮の揚げ物(ケーブ ムー)を添えて食べれば気分はラーンナー(タイに併合される前にあった北部の国)人。
ソムタム(パパイヤサラダ)&生ビーフン
ソムタム、焼き鶏(カイヤーン)&モチ米(カオニオ)は最高最強の組み合わせ。
あまりにおいしいのでついつい食べ過ぎ苦しくなるほど。
で、家ではモチ米の代わりに軽くて後が楽なカノムチーンと頂くことにしています。
カノムチンにソムタムを汁ごとどさり。
この「汁ごと」がポイントで、ソムタムとカノムチーン双方の味が一挙に高まります。
ポリポリ。むしゃむしゃ。ああ、幸せ。
世の中にこの味を知らない人がいるなんて可愛そう。
カノムチーンは腹にたまらず軽いので昼食に最適ですよ。
グリーン カレー&生ビーフン
ケーン キワーン(グリーンカレー)は通常ご飯にかけますが、カノムチーンにかけてもおいしいです。
このほかケーン ペット(レッド カレー)と組み合わせることもよくあります。
本当のタイカレー(グリーンカレー、レッドカレーはカレーではない)をカノムチーンにかけることはありません。
スプーンとフォークで食べる麺料理
うどんにしろラーメンにしろ麺類は箸ですすりますが、カノムチーンはスパゲッティーのようにスプーンとフォークを使って食べます。
ただし、右手にスプーン、左手にフォーク。
なぜかというと、カノムチーンはコシがまったくなく、箸でつまむとプツンプツン切れてしまうんです。
でもフォークとスプーンもけっこう食べ辛いです(笑)。
カノムチーンの作り方
カノムチーンの原料はビーフンとまったく同じインディカ米。
米は日本米のような粘りのあるジャポニカ種とタイ米のような粘り気のないインディカ種に大きく分けられ、ビーフン、カノムチーンにはインディカ米の硬い品種が最適とされています。
・米を一晩水に浸ける。
・水を切って挽き粉にする。
・布にいれ水を搾り出す。
・ほどよい水分になったところで生地を練る。
・蒸す(ぼくが昔みたところでは蒸す行程はなかったように思う)。
・中はまだ生の状態で引き上げ、機械でよく練る。
・筒に入れた生地を熱湯の中に押し出す。
・すくって水洗いし完成。
*カノムチーンはべとべと指にくっつきますので、生を触るときは水をつけて引きちぎります。
************
タイ人はカノムチーンが大好き。
海外に暮らすタイ人がどうしても食べたくなるソウルフードのひとつです。
以上。
コメント