新天地を求めて国を飛び出した中国人たちにより広められた海南島の鶏飯。今では東南アジア各国でお国料理として食べられるほど浸透しています。近年、その各国の鶏飯を押さえて日本人に大人気なのがタイのカオマンガイ。そのおいしさの秘密は何なのか、というお話。
*カオマンガイでも間違いではないのですが、ガイとしたのではほかのカタカナタイ語と整合性がとれなくなるので以降カイとしておきます。
タイのチキンライス、カオマンカイ
まずは、カオマンカイを知らない人のために。
カオカンカイとは、鶏脂の出汁で炊いたご飯にゆで鶏を切ってのせた鶏飯、チキンライス。
ようするに、カオ(ご飯)マン(脂)カイ(鶏)。
主に大衆食堂や屋台、フードコートで食べる一皿料理。
本来は朝食、昼食用の料理でしたが、今は夜でも食べられています。
朝からこんなものをがっつり食べるなんてすごい食欲ですよね。

おいしいカオマンカイとは
タイ人が言うおいしいカオマンカイとは以下の通り。
・ご飯は柔らかすぎず硬すぎずべとつかず、脂でほどよいしっとり加減であること。
・鶏は適度な時間で煮込み、肉は白く脆過ぎず、皮は張りがあること。
・タレは、鹹味、酸味、甘味、辛味、酸味、のバランスがとれていること。
カオマンカイはタレで食べる
カオマンカイの構成要素、ご飯、鶏、タレのうち、重視されているのはタレ。
有名なシンガポールの鶏飯を食べたタイ人は一様に、
「鶏肉もご飯もおいしかったのだけど、タレがねえ・・・」
と言います。

黒い小皿は黒醤油。苦みがあるのでかけ過ぎに注意。
カオマンカイのタレは基本、タオチオと呼ばれる半液状の醤というか味噌がベース。
このタレは日本人の味覚神経をも強く揺さぶります。
日本でカオマンカイがヒットしたのはこのタレの力かもしれません。
実際、味噌を入れないタレを出す店もあるのですが、肉やご飯のおいしさが半減してしまうように感じられます。
それから、流行っているカオマンカイ屋の鶏、どこもごく軽く煮てジューシー。
こういうのがカオマンカイのあるべき姿のようです。
外さないカオマンカイ屋の選び方
私たちにとってカオマンカイはご飯に鶏を載せただけのファストフード。
でも店側はそうではありません。
朝の三時頃に起きて鶏を煮たり別に内臓をゆでたり、ご飯を炊いたり、スープやタレを作ったり、思うより大変な作業に追われています。
というわけでカオマンカイ屋のメニューは基本、カオマンカイとサテ(イスラム風鶏の串焼き)のみ。
ほかのメニューまで用意する余裕がないそうです。
逆にいえば、カオマンカイ一本でやっていけるほどタイ人はカオマンカイが好きなんですね。
そしておいしいカオマンカイを食べるのなら、ほかのメニューと一緒に1日に1羽とか2羽とか売っている店でなくて、こういうカオマンカイ一つしかないカオマンカイ専門店を選ばなければなりません。
目印は店先のガラスケースにぶら下げられた丸ゆでの鶏。
ここに呆れるほどの鶏が揺れていれば間違いないです。
カオマンカイ理想の鶏は玉抜き鶏
鶏飯発祥の地は中国南東部の海南島とされています。
シンガポールの鶏飯、マレーシアの鶏飯、色々なスタイルの鶏飯がありますが、タイのカオマンカイ屋のほとんどは海南鶏飯スタイル。

家のお正月はお頭つき地鶏のカオマンカイ。お供え物のお下がり
本家との大きな違いは鶏。
カオマンカイにはカイ トーン、去勢鶏が一番とされています。
去勢された鶏は雄特有の活発さが消え、一日中食っちゃ寝を繰り返すため、いい具合に太っておいしくなるのだとか(本当かなあ)。
しかし、数十年前にホルモン剤による去勢が禁止、手間がかかる手術法に切り替わったことから絶対数が減少。
現在「去勢鶏」の看板を掲げながら本物の去勢鶏を使っている店はそう多くないそうです。
カオマンカイの注文は超簡単
カオマンカイの注文は簡単です。
空いている席につき「カオマンカイ」と一言。
これすら面倒であれば、鶏を指差すだけでもたいていわかってもらえます。
鶏をがっつり食べたいときは別皿注文
普通は最初からご飯の上に鶏肉をのせていますが、鶏とご飯を別皿で注文することも可能です。
鶏をがっつり食べたい、とか、数人で一緒に囲んで食べたい、あるいはビールのつまみにしたい、という場合は別皿にしてもらいます。
タイ語では「イェーグ カイ(鶏を分けて)」とか言いますが、これくらいならゼスチャーでも大丈夫でしょう。頑張って下さい。
この場合、肉の量が増えるので代金も当然それに合わせて高くなります。
価格は通常、1皿が40バーツ前後。鶏を分けると量にもよりますが100バーツくらいかな。
カオマンカイの最高峰
カオマンカイは本来屋台料理。
レストランなどで食べる料理ではありませんが、バンコクの4つ星ホテルモンティアン内にあるルアン トン(ルエン トン)ではカオマンカイを提供しています。

恐らくこれが最高級カオマンカイ
恐らくここがタイカオマンカイの価格部門での最高峰。
1セット300バーツぐらいするだけあって、これがカオマンカイか、と思うぐらい豪華。
日本人好みの味だそうです。
*モンティエンではなくモンティアン。「宮殿」を意味する古語です。
南部ベートン式カオマンカイ
南部ヤラー県のベートン郡にベートン鶏、カイベートンという中国人によって持ち込まれた種類の鶏がいます。
この鶏をカオマンカイにするととてもおいしいらしいのですが、ベートン鶏は成長が遅く手間がかかるため通常の倍の値段だそうです。
鶏はジューシーではなくやや乾き気味に煮てご飯も脂少なめのあっさり味が特徴なのだとか。
カオマンカイ屋で食べられるその他の料理
カオマン カイ トード
カオマンカイはゆでた鶏が定番ですが、揚げた鶏や焼いた鶏を使うことも。
揚げた鶏は、カオマン カイ トード、焼いた鶏の場合はカオマン カイ ヤーンといいます。
サテ
鶏肉の小片に香辛料をまぶし、串を打って焼いたもの。
一言で言えばカレー風味の焼き鳥。
お隣のマレーやインドネシアから伝わってきた料理で、本来豚は使わないはずなのですが、タイでは鶏よりも豚の方が一般的。
ピーナツ味噌ベースのやや甘いタレにつけて食べます。
店先でパタパタうちわを扇ぎながら手際よく串をかえしているところはまるで焼鳥屋の光景。
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