タイは世界でも有数の砂糖生産国。日本が輸入する砂糖の何割かはタイ産の砂糖。そして個人の砂糖消費量でもタイは世界トップクラス。砂糖大国タイで使われる砂糖の種類、特徴、使い方などの話。
ヤシから作る砂糖
タイの砂糖はサトウキキビから作る一般砂糖とヤシから作るヤシ砂糖(パームシュガー)に大きく分けられ、パームシュガーには次の2種類がある。
タノード パーム シュガー(ナムターン タノード)
オウギヤシの汁液から作られる。
これがタイ本来のパームシュガー、ナムターン。
香りがよいのが特徴。現在は手に入れるのが難しい。
ココナッツ パームシュガー(ナムターン マプラーオ)
ココヤシの汁液から作られる。
近年のパームシュガーはたいていこちら。
でもたいていグラニュー糖を混ぜている。

一般に使われる缶砂糖(ナムターン ピップ)
パームシュガーは溶けやすい。
そこで20%前後のグラニュー糖を加えて固める。
この手の固めたパームシュガーをナムターン プックと呼ぶ。
一方、溶けてもよいように石油缶ほどのブリキ缶(ピップ)にそのまま入れて販売するパームシュガーを缶砂糖(ナムターン ピップ)と呼ぶ。

青マンゴーの傑作料理も普通の砂糖では味が出せない
しかし近年の缶砂糖はグラニュー糖を煮詰めて水飴を加えそれらしく作ったものがほとんど。
本物もあるようだが値段は倍以上する。
本物のココナッツシュガーの特徴
・砂糖や水飴を混ぜた混合砂糖より色が濃い。
・ヤシ砂糖特有のよい香りがある。
・柔らかで口に入れるととろける甘さ。
・一番の特徴は砂糖を混ぜていないため溶けやすいこと。
常温に置いておくと型崩れを起こし変色するので冷蔵庫で保存する。
パームシュガーの代用品
タイ料理のレシピで単に「砂糖(ナムターン サーイ)」とあればグラニュー糖。
「缶砂糖(ナムターン ピップ)」とあればパームシュガーを指す。
ナムターン ピップは主にソムタムやヤム(ライム和え)、菓子などに使われる。
ナムターン ピップは通常、市場で買う。

庶民が使うナムターン ピップ
隣村の市場では1キロ30バーツ前後だった。
スーパーでもナムターン ピップに似たねっとりとした砂糖が売られている。
レッテルには「サトウキビ砂糖とヤシ砂糖の混合砂糖」とあるけど、成分のほとんどはサトウキビ砂糖(グラニュー糖)。450gで40~50バーツ。
レシピにナムターン ピップとあれば、最近はこの手のパームシュガーの代用品を使うことが多いようだ。
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サトウキビから作る砂糖
一般的な砂糖はサトウキビを原料に作られる。
店頭に並べられているのはだいたい以下のような砂糖。
・ナムターン サーイ カーオ ボーリスット Refined sugar
純白砂糖の意味。グラニュー糖。一般に白糖として売られている純度の高いポピュラーな砂糖。
・ナムターン サーイ カーオ mill white sugar
白砂糖の意味。ザラメに相当。上の砂糖より少し結晶が大きい。
・ナムターン サーイ スィー ラム Brown sugar
ブラウン シュガー。
・ナムターン サーイ デーン Soft brown sugar
赤砂糖の意味。赤茶色で砂糖の焦げた匂いがある。
結晶が大きいほど色濃く風味も匂いも強い。
少し安いので原価を抑えたいとき白糖の代わりに使われたりする。

おばさんの顔がとても良いオーガニックシュガー
・ナムターン オーガニック Organic sugar
有機農法で栽培したサトウキビを原料に化学薬品を加えず作った砂糖とのこと。
特徴は上のナムターン サーイ デーンに似ている。
・ナムターン アイスィング Icing sugar
サーイ カーオを細かく粉砕しふるいにかけた砂糖。粉砂糖。
塊になるのを防ぐためタピオカ澱粉や米粉などが加えられる。
菓子に使われる。
・ナムターン ポン ライヤット Caster sugar
細粉砂糖の意味。
アイシング シュガーとほぼ同じだけれど凝固を防ぐ物質が加えられていない。
溶けやすく菓子向き。ベーカリーシュガーと書かれていることもある。

ベーカリー用シュガー
・ナムターン ポンド Cube sugar
角砂糖。サーイカーオを潰し固めたもの。
・ナムターン クルアット Crystalline suga
氷砂糖。大きく結晶化させた砂糖。
・ナムターン オーイ
サトウキビ砂糖の意味。黒砂糖。
風味が強いため主に菓子に使われる。
黒砂糖のおいしい頂き方
タイは世界有数のサトウキビ生産国。
近くの市場では農家がサトウキビの汁を煮詰めてつくった手製の黒砂糖が売られている。
これがおいしい。
黒砂糖は精製していないから無機質な白糖に比べ暖かく風味がある。
ただ、色がつくし風味があるせいで料理には使いづらい。
逆にその風味と色を利用して菓子類にはよく用いられる。
黒砂糖の食べ方でぼくが感心したのは焼き餅。
タイ族はなぜかモチを食べない。
過去、のどにモチを詰めて死んだ人が続出し、危険な食べ物、ということで次第に食べられなくなった。
というのはもちろん嘘だけど、毎年少なくない死人の出る日本のモチはフグの毒より恐ろしい食品だと思う。

無漂白の氷砂糖
それはともかく、この餅は本来少数民族の食べ物で地元ではカオ チー ガー、カオ ガー ピン(焼きゴマ米)、などと呼ばれている。
直径約20センチ厚さ5ミリほどの平たい餅で普通の白い餅とエゴマを混ぜたエビ味噌色の餅がある。
炭火で炙ってぷくり膨れた餅に黒砂糖をまぶし、くるくるっと巻いてホフホフしながら食べる。
じゅわっと溶けた黒砂糖。
あれはうまい。
餅つき器があれば薄い餅をつくってやってみてください。
最近話題のエゴマを練り込んでやるともっとおいしいです。
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