果物界のプリンセス、リンチー(ライチ、茘枝)は、品があってとてもおいしい果物。でも彼女はとてもデリケート。旬が短く変質しやすいので本当においしいリンチーは産地以外で味わうことができません。
今回はそんな知られざるリンチーのおいしさを伝えます。
日本人は知らないライチのおいしさ
ライチ、レイシ。タイ語でリンチー。
絶世の美女楊貴妃の心を惑わした果物として知られます。
タイ北部はそのリンチーの名産地。
お菓子の包み紙のような赤く薄い皮。
少し癖のある温かな香り。
甘酸っぱく白いジューシーな果肉。
「これを剥けば滴りて滝のごとく、これを食せば香りて花園のごとし」
ご存じの方は少ないのですが、リンチーって本当においしいですよ。
プリンセス ライチはとてもデリケート
果物界のお姫様リンチー。
世界の果物ベスト5入り間違いなしのおいしさです。
なのに知られていないのはデリケートで旬が短いから。
出回り始めたと思ったらもうお終い。
産地や品種によって多少ばらつきがあるものの、旬は正味5月から6月にかけての数週間です。
その上、リンチーはもぐとすぐに変質を始め、数日で味も香りも褪せてしまいます。
たいていの果物はもいでしばらく置いた方がおいしいのですが、リンチーは本当に鮮度が命。
取り寄せるのではなく、身体を産地に運んで食べる。そういう果物です。
ライチはほどよく熟れた枝付きを選ぶ
未熟のリンチーはとても酸っぱく、熟すにつれ急速に甘くなっていきます。
ほとんど追熟しないので購入の際はほどよく熟したものをお選びください。
リンチーは枝つきのキロ売り。枝も重さのうちです。
たまに枝なしの実だけを枝つきより安く売っていることがあります。
「わ、こっちの方がすっごい得じゃない」
日本の方は枝なしを買う傾向にあるのですが、よいリンチーは枝から落ちたりしません。
おいしいリンチーが食べたいのなら損なようでも枝つきです。
無農薬がいいとは限らない
一目でもぎたてだとわかる真っ赤でぴちぴちのリンチー。
でも半分近く虫が入っていました。
「それはひどい」
と思うのは素人さん。
もしリンチーに虫が入っていたら喜んでください。
リンチーはとても虫が入りやすく、ときにはすべての実をやられることがあります。
農家にとっては死活問題。お薬に頼らざるを得ません。
虫の入っているリンチーは庭などに植え放しの天然無農薬である証です。
おいしい果物に虫がつくのは当たり前。
もっとも、無農薬だから絶対おいしい、というわけでもありません。
こんなにおいしいのならお薬散布も許しちゃう。もっと食べたい。
と思わせるものもありますから、どちらを選ぶかは、あなた次第。
虫食いライチはおいしい?
気づく人はあまりいないのですが、リンチーにつく虫は上部、ヘタのようなところに入ります。
確認は簡単。皮を剥いてそこが黒ければ入ってます。白ければ入ってません。
たとえ入っていても人畜無害。風味が多少変わる程度なのでみなさん気にせず食べています。
完熟後のライチは風味が激変
リンチーは完熟後、酸味が弱わまり、その分甘味が増します。
しかし、ただ甘くなるだけで、香りも風味も激変。
柔らかだった皮は茶色く硬くパリパリになってしまいます。
産地(タイ北部)の人間からいわせれば、これはもうゴミ箱に片足突っ込んだリンチー。
あまりお勧めはしませんが、後は捨てられるのを待つだけの実なのでとても安く手に入ります。
剥くとパリパリの皮が爪の間に突き刺さりけっこう痛いので気を付けてください。
ちなみに、産地から楊貴妃の元へリンチーを届けるには馬を飛ばして1週間ほどかかったそうです。
楊貴妃は色鮮やかなおいしいリンチーの味を知らなかったに違いありませんね。
食べ過ぎによる内熱(ローンナイ)に注意
リンチーは陰陽でいう「熱」の果物。
食べ過ぎ、体質によっては身体に熱がこもって変調を来すことがあります。ご注意下さい。
ライチの保存法
基本、リンチーは常温保存。
冷蔵庫で保存するとすぐに皮が硬くパリパリになりますので、湿った新聞紙に包み、ビニール袋に入れるようにすれば多少長持ちします。
でも、買ったその日、遅くとも翌日には食べ切ってしまうのがリンチーをおいしく頂くベストな方法です。
タイのライチの種類
リンチーの産地は冷涼な季節のある北部ですが、近年は品種改良が進み、気温が下がらなくても育つ品種が中部で栽培されています。
リンチーは意外に品種が少なく、市場に出回っているのは次の2種です
ホンフイ
北部で栽培されているリンチーのほとんどはこれ。
皮が薄くて色鮮やかな赤。小さなトゲトゲが特徴。
酸味はやや強め。タイのリンチーの代表種です。
チャカパット
皇帝と呼ばれる大型種。一目でわかるずんぐりした形。ピンクを帯びた暗い赤色。
トゲトゲはなくつるんとしています。皮が厚いので日持ちがよく、糖度はホンフイより多少高め。
酸味はあまりありません。酸味の苦手な方はこの種をお勧めします。
このほか、オーヒヤ、コームなどの品種があります。
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