どこが桃なんだ
「とうちゃん、モモ買ってきたよ!」
つれあいが自慢げに見せた果物、一瞬、黄桃に見えたけど匂いを嗅いで「うげえ」となった。
鼻にまとわりつくような、どことなく嫌らしい匂いだ。
「これ、桃じゃない。だいたい桃が1キロ10バーツなわけないだろう」
「でも、売り子はモモっていってたよ」
彼女はぼくがいうことはまったく信じないのに、市場の売り子がいうことはすぐに信じてしまう。
匂いが嫌いなので口をつけなかったけれど、この果物の価値と味は価格が物語っている。
しかし、自称、人間掃除機の彼女は何も気にならないらしく、うまいうまいとみな食べてしまった。
まずさがたまらない?果物タマゴ
調べてみるとこの果物、カニステルもしくはエッグフルーツ、果物タマゴと呼ばれるそうだ。
〈アメリカの方では、塩、胡椒、マヨネーズなどをかけて食べ、ジャム、菓子作りにも使われるが、当たり外れがとても大きく、完熟してシミが出てこないとヤニ臭さがあり非常にまずい〉
と書かれている。
つれあいが食べたのはまだ色のきれいなつやつやしたやつだった。
さすが人間掃除機だな。
日本では沖縄で細々栽培されてはいるものの、カネステル(金捨てる)とか揶揄され評判はよくないらしい。
それでもネットでは数千円で売られている。
蓼食う虫も好き好き。
好きな人はたまらなく好きなようだ。
甘いゆでタマゴの味がする果物
果物タマゴ、タイ語では、モーン カイ(多分黄身のこと)、スィアン トー(仙人桃)、タマゴ桃、家桃、クメール桃、クメール ラムット、などと呼ばれている。
市場のおばさんもでたらめをいったわけではなかったようだ。
味については、
〈熟すととても甘いけど、未熟はヤニとえぐみがひどい。ぱさぱさしていてのどにくっつく。食べるとのどが渇く。パン生地のよう粘っこい。黄身のようにねっとり。蒸したかぼちゃ。ふかしイモ〉
ということであった。
それから、果肉は歯にもくっつくらしく、
〈食べた後に、にたっ、とすると、歯が真っ黄色。知らない人が見たらぶったまげるので要注意〉
ともあった。
食べるときは水を用意せよ
実際に食べてみたところ、上に書かれていることはすべて正しい。
とても甘く少しヤニのあるパサパサのゆでタマゴの黄身を食べているような感じでのどに張り付きむせかえった。
こいつを食べるときは傍らに水を用意しておくことをお勧めする。
歯にもきちんとくっつき、鏡を見たらかなり笑えた。
〈ふかしたイモが好きな人ならきっと気に入る果物〉
だそうだが、わたくしはイモだけで十分であります。
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