《タイのタブー》 頭をなでると怒られる!は本当か

文化

時代が大きく変わった今、昔からタイのタブーとして挙げられてきた「子供の頭をなでると叱られる」は今でも本当にタブーなのか、そもそもどうしてこのようなタブーができたのか、という話。

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なぜ頭に触れてはいけないか

「たとえ子供であろうとタイ人の頭に触れてはならない。頭をなでただけで親がすっ飛んでくる」
以前、タイについて書かれた本の中には必ずこうあった。
そもそもなぜ頭に触れてはいけないのだろう。
日本のサイトや本では「頭に精霊が宿ると信じられているから」と説明している。
正しく言えば精霊とは少し違う。

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頭が神聖視されるのはクワンが宿るから

タイには古くからクワンという考え方がある。
クワンは生まれながらに備わっている実態のない精神体、元気さとか魂のようなもので、人だけでなく動植物にも宿るとされる。
しかし、そこに生涯留まっているわけではなく何かの弾みに出て行くこともある。
クワンがしっかり根を下ろしていれば、その人は健やかで幸福な人生を過ごせるのだが、もし出て行ってしまうと、事故、病気、あらゆる災厄に見舞われついには死んでしまう、と信じられてきた。
頭に触れてはならない、というのはこのクワンが宿る神聖な場所だからである。

※クワンには、つむじ、吉祥、心のよりどころ、善なるもの、の意味もあり、つむじと精神的なクワンは結びつけて考えられている。

頭を触っていけない理由はクワンが逃げるから

タイではときどき手首に木綿の糸を巻いている人をみかける。
これはプーク クワンといって、クワンを逃がさないよう繋ぎとめておくためのお呪いである。

また、小さな子供がくしゃみをするとすかさず
「クワン マー(クワンよ来い!)」
というお母さんをときどきみかける。
これも、くしゃみの弾みでクワンが飛び出すのを防ぐためのお呪いだ。

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クワン信仰時代

かつてタイの子供たちはつむじのところにマゲをしていたのをご存じだろうか。
あれも、クワンを守って健やかに育つように、との願いを込めてのことだ。
そして何かよくないことが起きたときにはすぐにクワンを呼び戻す儀式をしていたのである。

ちなみにその頃は補償金とかお詫びのお金のことをカー クワン、クワン代と言っていた。
クワンを脅かすようなことをして申し訳ありません、ということである。
それから、プレゼントのことを今でもコーン クワン、魂物と言うけれど、これは互いに相手のクワンを敬って贈り合う物のこと、とタイ日大辞典では説明している。

現代もクワンは信じられているのか

さて、現代においてもこのタブー、クワンはまだ信じられているのだろうか。
バンコクの都内バスに乗って見ればすぐわかる。
身動きできないような状態で吊革にぶら下がっていれば否応なしに近くの人の頭に手が当たってしまう。
頭に触れた!とかいちいち腹を立ててはいられない。
そういう時代ではなくなってしまったのだ。

タイ人が子供の頭をなでるようになったとき

ぼくがタイに暮らし始めたのはまだ昔のタイの面影が残る頃だったので子供の頭をなでる人はまったくいなかった。
頭をなでる、という行為そのものがなかったのである。
その後、テレビが普及し海外の映画やドラマで頭をなでるシーンがしばしば見られるようになった。
外国では頭をなでる行為が親愛の表現であることを知ったタイの人たちはさぞ驚いたことだろう。

ぼくが初めて子供の頭をなでるタイ人を確認したのは1990年代後半。
当時のチュワン首相のテレビニュースだった。
どこかを視察に訪れていた首相は近くにいた住民の子供を抱き上げ頭をなでた。
「うそ!」
けっこうショックだったので今でもそのシーンが脳裏に焼き付いている。

気をつけろ!クワンはまだ生きている

現在、子供の頭をなでてはいけない、というタブーはほぼなくなったと見ていい。
タイの人たちも平気で子供の頭をなでている。
ただ、そのなで方を注視して欲しい。
タイ人が子供の頭をなでるときは頭の前の方をなで、クワン、つまりつむじの辺りをなでる人はほとんどいない。
無意識にか意識的にかは知らないけれど、明らかにクワンを避けている。
クワン信仰はまだ生きているのだ。

今でもごく希に外国人が子供の頭をなでて大騒ぎになる事件があるという。
もしかしたらそれは、外国人がうっかりクワンに触れ、子供の両親がクワンを信仰している昔気質の人だったからかもしれない。
だから、なるべくなら人の頭には触れない方が無難だと思う。
どうして子供の頭をなでたければつむじを避けて下さい。

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男が彼女の頭をなでるのはどうなのか

では、男が女の子の頭に触るのはどうなのだろう。
ほら、アニメや逃げ恥とかのドラマでよく見るカレシが彼女の頭をポンポンと叩くシーン。
あれを昔のタイの女の子にすれば血の雨が降ったに違いない。
というわけで調べてみたところ、
「男友達が頭をなでるのは気があるからなの?」
「なぜ男は女の頭をなでるの?」
などと、日本では話題になりそうもないテーマの投稿サイトがけっこうあった。

どうやら最近のタイのお兄さん方は恋人でない女の子でも片っ端から頭をなでまくっていていて、なでられた女の子が「どいう意味なのか考えてしまう」らしい。
恋人が頭をポンポンやるシーンの多い日本のドラマやアニメを見て男たちが「これはいいい!」と積極的に取り入れ乱用しているのかもしれないね。
結論。男が女の子の頭をなでるのはタブーではないけれど、まだ完全に定着している行為とは言いがたい。

やっぱり頭には気をつけるべし

昔ほどではないものの、タイでは依然、頭が神聖視されている。
親や教師が子供に体罰を加えるときでも決して頭は叩かない。
貴賓を歓迎するのだってレイを首にかけたりせず台に置いたプアンマライという小さな花輪を捧げる習慣である。
レイだと神聖な頭に触れかねないからだ。
余計なトラブルを引き起こさないためにも、タイでは他人、特に目上の人の頭に触れてはならないことをよく肝に銘じておこう。

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