日本では天然記念物に指定されているカブトガニがタイでは一般食材として扱われています。そんなに珍しいものなら食べてみたい。というわけで、今のように情報が簡単には得られなかった昔、毒カブトガニを食べて大変な目に遭った話です。
焼きイカに当たって死にかける
上の娘が5歳くらいの頃、有名なリゾート地サムイ島へ家族で行きました。
その帰り、船の港があるスラータニーという町で1泊したのですが、夜半、つれあいとぼくはそれまで経験したことのない猛烈な吐き気と下痢に襲われトイレの争奪戦。
屋台で買って食べたイカ焼きがかなりの生焼けでそれに当たったようです。
タイ人は硬くなるのを嫌い生焼きのイカを好むんですね。
でも問題は鮮度。
お気をつけください。
タイの食用カブトガニは2種
焼きイカ食中毒事件から十年ぐらい後、タイでもネットが普及。
必要に迫られカブトガニについて調べると、次のような記述がありました。
カブトガニには、大型でやや緑色がかった皿型カブトガニ(メンダー チャーン)と、中型で赤茶色ぽい茶碗型カブトガニ(メンダー トエ)の二種がいる。
どちらも通常は無毒なのだが、茶碗型カブトガニの方は2月から4月頃にかけて毒を持つようになる。
この毒は熱で分解されず、口にすると、頭痛、吐き気、呼吸困難、などを引き起こし最悪の場合死に至る。
よく死ななかったものだ
「そういやあ昔、スラータニーの焼きイカで食中毒になったとき、市場で買った焼きカブトガニの卵も一緒にむしゃむしゃ食べたなあ…」
思い起こすとそいつは紛れもない茶碗型カブトガニ。しかも4月。
そうか、食中毒の犯人はこいつだったか。
事件から十年も経ってからその真相を知りました。
カブトガニの毒、なんとフグの毒と同じテトロドトキシン。
フグ1匹分で30人は殺せるという猛毒であるうえ熱を加えても分解されません。
解毒剤もありません。
「日本人、カブトガニを食べて中毒死」
よくニュースにならなかったものだと冷や汗です。
意外に知られていない毒カブトガニ
当時はカブトガニが毒を持つことを全く知りませんでした。
そんなに危険なものを市場で普通に売ってるなんて思うわけありませんよね。
近年になって保健省も一応、2月から4月には食べないよう注意を促してはいますが販売規制はしてないようです。
この季節は毎年のようにカブトガニを食べて中毒を起こし死んだ、あるいは病院へ搬送された、という人のニュースを耳にします。
ネットには「天然記念物、カブトガニくったぞおお!」とかの記事がたくさんアップされていますが、みなさんカブトガニが猛毒持ちであるのを意外に知らないみたいですね。
中には「カブトガニの毒は肉にあり卵は大丈夫」などという記述も見られました。
この卵を食べてひどい目に遭う人が少なからずいるんですよ・・・。
毒カブトガニの見分け方
皿型食用カブトガニと茶碗型毒カブトガニの見分け方は意外に簡単ですので怪しいと思えば絶対に手を出さないでください。
皿型食用カブトガニ(メンダー チャーン)
食用可。大型で平べったく緑っぽい。
尻尾に小さな棘があり断面が三角形なので角尾カブトガニ(メンダー ハーンリアム)とも呼ばれる。
茶碗型毒カブトガニ(メンダー トエ)
毒。中型で背が盛り上がり赤茶色っぽい。
尻尾がつるんとして断面が丸いので丸尾カブトガニ(メンダー ハーンクロム)とも呼ばれる。
食べるのなら熟練調理人のいる店で
専門家は、売られているカブトガニの卵、特に卵だけを取り出して詰めたパックを買って自分で調理するのはリスクを伴うので熟練者のいる料理店で食べるように、と注意を呼びかけています。
理由は、タイの食用カブトガニが激減し価格が高騰しているから。
現在、タイの海岸を這いずり回っているカブトガニの多くは毒カブトガニ。
食用カブトガニは近隣国からも輸入していますが、心ない者が量を増すため茶碗メンダーの卵を混ぜる恐れがあるとのことです。
カブトガニの食べ方と味
カブトガニをひっくり返せばすぐにわかりますが、頑丈な甲羅の裏にはエビの足のようなものがうごめくばかりで食べる所などほとんどありません。
カブトガニは甲羅の間にぎっしり詰まった卵を食べます。
汁物にすることもありますが、ライムで卵を和えたヤム カイ メンダー タレーが定番。
カブトガニの卵は磯の匂いが強く、食感もゆで卵の黄身のようにねちっとした感じでそうおいしいものではありませんでした。
もっとも、ぼくが食べたのは毒カブトガニの方なので食用カブトガニの味は知りません(笑)。
カブトガニはタイ語で何という
カブトガニはタイ語でメンダーといいますが、メンダーには海のメンダー(メンダー タレー)と田のメンダー(メンダー ナー)があります。
海のメンダーがカブトガニ、田のメンダーは水棲昆虫のタガメのことです。
ついでに人に向かってメンダーといえばヒモを指します。
海のメンダーも田のメンダーもメスの方が大きく、交尾期にはオスがメスにしがみついて過ごすところからの連想です。
以上。
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