深夜、犬たちが妙な吠え方をした。
どうせコブラかカニ(どういうわけか水場もないのに庭にはカエルや大きなカニがけっこういる)だろうと思って外に出てみたら意外にもサソリだった。
家の庭はヘビが多く、コブラは年に何度か見かけるけど、サソリを見たのは実に数十年ぶり。
「かっちょえええ」
黒光りの甲冑。大きなハサミ。湾曲した鋭い針。
その尻尾をひょいとつまんで掌にのせた、
というのは嘘で、ゴム草履で踏んづけた。
ところが、サソリの針は思ったより長く、薄いゴム草履を通して足に刺さり、飛び上がった、
というのも嘘。
サソリの殻はかなり硬い。
力の加減ができずにぐちゃりと嫌な音を立てて潰れた。
昼間だったら捕まえて飼ったのだけど、深夜だったもので、入れ物を探すのが面倒になり、踏みつけてしまった。
ちょっぴり後悔。
それから数ヵ月後、
「ねえ、面白い虫がいるよお」
呼ぶ声がしたので庭に出たら、つれあいが捕らえたサソリをツンツンして遊んでいた。
(サソリはクモの仲間だけどタイ語では虫と呼ぶ)
彼女は田舎育ちなので生き物に対し大げさに騒がない。
ガ、ヤモリ、ゴキブリ、ネズミ、ぜんぜん平気。
サソリに刺されれば多少は痛いけど、死にはしない。
よく見れば姿形もエビやカニの方が不気味だ。
従って怖がる必要がない。
彼女がツンツンし過ぎたのかサソリはすぐに死んでしまった。
ちなみに、おじさんは食に関して「何でも食ってやろう」が方針。
でもサソリはクモの仲間というところが気になるので口に入れたことがない。
人によっては「エビのよう」ともいう(まさかね。きっと殻からの想像だろう)。
興味のある方、お試し下さい。虫の屋台で売っています。
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