海外で日本料理が食べたくなったとき

一般

海外で暮らす大きな問題が食。特に中年以降に
海外で生活を始めた人たちは日本食が恋しくて
たまらなくなる。しかし、そう都合よく
日本食にありつけるとは限らない。
なければ自分で作れ、というわけで海外で
生まれて初めて寿司を作ってみたときの話。

 

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食べたいものは自分で作る

「日本料理が恋しくありませんか?」
日本からやってきた人にときどき訊ねられる。
日本料理にはそれほど執着しない性質だけれど、食べたいものがあれば自分で作る。

ワンタンめんなどもたいてい家でつくる

ワンタンめんなどもたいてい家でつくる

「作れないものはどうするんですか」
「あきらめます」
これが外国暮らしのコツである。
手に入らないものを食べたいと思ったところで仕方ない。

海外で生まれて初めて寿司を作ってみた

日本食の好きな娘やつれあいに寿司を食べさせてやろうと思い、本を見ながら握り寿司に挑戦した。
経験はまったくない。
ご飯を炊き、ステンレス鍋に入れた。
ウチワで仰げ、とあったので代わりに扇風機で風を送りながら合わせ酢を混ぜた。
「ひゃー、すっぱい」
味見したつれあいが声を上げた。
酢はタイ産、酢酸5パーセントの純合成酢。
米はタイ米。しかも玄米の入ったジャスミン米である。
うまくつくれる方がおかしい。
へたな持ち方をすればぽろりぽろり崩れてしまう。

海のない田舎の寿司のネタ

「料理することはあるんですか」
知り合いが訊ねた。
「ええ、たまに寿司とかつくります」
「へえ、すごい。ネタは何ですか」
「ネタ・・・」
言葉につまった。

エビは豊富に出回っている

エビは豊富に出回っている

タイ最北のチェンライには海がない。
魚介類は千キロ南からはるばる車で運ばれてやってくる。
長旅にくたびれ切った魚たちはもうとっくの昔にゾンビだ。
食べるのなら覚悟しろよ、と、澱んだ目つきで凄んでいる。
というわけで家の寿司はエビとたまごだけ。
笑うなよ。刺身にできる魚がないのだから仕方ないじゃないか。

握りはやめて手巻き寿司

そのうち要領を覚え、まあ、食べられるようにはなったのだけれど、何しろ肝心の刺身が手に入らないもので握り寿司はやめて手巻き寿司に切り替えた。

コロッケは頻繁に食卓に並べられる

コロッケは頻繁に食卓に並べられる

海苔はわざわざバンコクから買ってきた。
「こんなものチェンライの町にもあるわよ」
つれあいが市場で中国産らしい海苔をごっそり手に入れてきた。
かなり厚みがあるものの海苔は海苔だ。
これに、レタス、にんじん、きゅうり、アスパラ、たまご、アボガド、肉、エビ、カニなんかを巻く。

家族のために歯でカニの肉を取り出す

寿司の日は、バリッ、バリッ、という音が台所から聞こえてくる。
つれあいが家族のために蒸したガザミの殻を歯でかじり肉を取り出してくれるのだ。
小一時間もするうち彼女の顔は飛び散ったカニの白い肉片だらけになる。
彼女が台所から出て行った隙に殊勝にもカニの殻を剥いてやろうと思った。
二本目の足にかじりついたときだ。
ボキッ!
ものすごい音がして床に何か落ちた。
恐る恐る拾ってみれば前歯だった。
舌で探るといつもは塞がれているはずのところにぽっかり大きな空間が開いていた。
側にいた娘たちは心配顔でこちらを見ている。
どうしたものか。
とりあえず、
「イーッ」
目を寄せて口を開けた。
「ワッ!」
喜んだのなんの。
二人の豚児は涙を流して笑い転げた。

人の悲しみを知らず大喜び

人の悲しみを知らず大喜び

「なーに騒いでんのよう」
そこへつれあいがきたのでまた、
「イーッ」
「ぎゃはははは」
バカうけだった。

マヌケとは

鏡を見ると前歯の欠けた顔はそのままで昔のお笑いタレント。
もともと面白い顔をしているのだけれど、もっと面白い顔になっていた。
「マヌケ」というのは「前歯が抜けた顔」の意味ではないだろうか。
彼女も歳が歳だから歯が折れるのを心配して高価なカニ クラッシャー(180バーツ)を買ってやったのだが、一、二回使っただけで、
「やっぱりこっちがいい」
またバリバリかじるようになった。
それにしても丈夫な歯だ。

恵まれているタイ

そのうちタイで日本食が大ヒット。
日本料理店があちこちにでき、ぼくの住むところでも日本の焼き海苔やサーモンの刺身が普通に手に入るようになった。

今はサーモンが寿司の中心だ。カニは懲りた。

今はサーモンが寿司の中心だ。カニは懲りた。

タイはほかの外国と比べればとても恵まれている。
食材は世界一ではないかと思われるほど豊富だし、日本人になじみのある食品、調味料も少なくないのでけっこう日本料理が作れてしまう。
どこの国で暮らしている人だったか、
「タイは何でもあって夢のようです」
と目を潤ませ話していた。

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