脂ばかりでおいしくない。それまで少し
軽く見ていた豚肉の中華風煮込み、
カームーのおいしさに気づかせてくれた
山奥の五つ星カームー。
以来それを越えるカームーには出会って
いません。
そんな激うまカームーについての話です。
信じられない山奥にあった五つ星カームー
タイ北部チェンライ県のパータンは深い山の中にあります。
そこはタイでありながらタイ人はあまり住んでいません。
山岳民族の村や雲南から移住してきたチンホー(ホー族)の村、中国を追われた国民党軍の子孫らが暮らす村が散在している辺境の地です。

眼下にはメコン。その向こうはラオス。
そのパータンへ行ったおり、見晴しのよいチープな食堂でカームーを食べたところ大当たり。
頭の中で鐘がカランカラン鳴りまくりました。
カー ムーというのは豚足の上の部分、豚の脚を八角やシナモンとともに中華風に煮込んだ豚肉料理です。
カヤ葺き小屋の絶品雲南カームー
食堂は扉も壁もなく、カヤ葺きの屋根の下にテーブルを三つ並べただけの簡素なつくり。
雲南から移住してきたという三十歳前後の夫婦がやっていました。
一応、雲南料理の店です。

パータンへは曲がりくねった道が続く
その豚の脚はよく煮込まれ、煮魚のように箸で簡単にほぐれたくらい。
口に含めば皮と肉との間にある脂がジュワっととろけました。
「トンカツがなんだ。しょうが焼きがどうした」
「豚肉を食べるなら絶対カームーだ!」
立ち上がって叫びたくなったほどです。
カームーはマントーと食べるもの
タイ人は普通、カームーをご飯にかけますが本来はマントーと食べます。
マントー(饅頭)とは蒸しパン。ようするに中に何も入ってない肉まんです。
しかし、マントーを置いてある町の本格的な料理店でも、砂糖を入れていたり匂いがしたり、本物には滅多に出会えません。
ここのマントーは手を抜かないでまっとうに作っているらしく、おいしくておいしくてかなりな大きさのやつをつれあいと二人してぱかぱか食べてしまいました。

メーサロンという山にある有名店の笑えるほど大きなマントー
ほかにも豆苗の炒め物や雲南高菜の漬物のスープも頼んだのですが、カームーの印象が強烈で味は覚えていません。
あまりにおいしかったのでお土産にマントーを十二個と大きなカームーの塊りをビニール袋に入れてもらいました。
家では娘たちも目を瞠り大いに感動です。
食べたいのに食べられない罪なカームー
料理は体調とか雰囲気とか別の要因でおいしく感じることがあります。
で、その二日後、本当にパータンのカームーがおいしかったのかを確かめるためにみんなで「雲南」へ行きました。
「雲南」はチェンライの町の有名な中華料理店でカームー マントーが自慢料理です。
長女のワカメはここのカームーが大好き。ぼくも悪くないと思っていたのですが、パータンのカームー マントーを経験した後では何だか味気なく感じられました。

これもメーサロンのカームーマントー
パータンのカームー、しばらく後に聞いた話では主人がバンコクの方に出て店を閉めてしまったそうです。
もう一度行きたいと思っていたのに本当に残念。
それから幾星霜。
そのカームーは心の中でますますおいしくなり、今でもタイで一番おいしいカームーとして存在し続けています。
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ムー クロープと揚げカームー(カームー トード)
ムー クロープという料理があります。
ムーは「豚」、クロープは「カリっとした」の意味。
ようするにカリカリ豚。
カリカリに揚げた皮付きバラ肉をスライス、ご飯にのせた カーオ ムー クロープは食堂でお馴染みですよね。
家ではムー クロープの塊を買って来て炒め物なんぞの具にしております。

高菜や腸の入ったカームー
さて、豚肉料理といえば、豚の脚をとろとろに煮込んだカー ムー。
このカームーと先のムー クロープを合わせたようなカー ムー トード クロープという料理、ご存知ですか。
豚の脚を下湯でして丸のまま揚げた豪快な料理です。
食べ方は先の2つとまったく同じ。
スライスしてご飯にのせたり炒め物の具にしたり。もちろん、酒の肴にもいいですよ。
ドイツのカームー(カームー ヤーラマン)
カー ムー ヤーラマン、ドイツのカー ムーという料理もあります。
ドイツのカー ムー、恐らく有名なドイツ料理シュバイネハクセのこと。
当初はオリジナル同様、豚の脚をゆでた後ローストしていたのかどうかはわかりませんが、今はたいてい揚げてしまうようです。
というわけで、カー ムー トード クロープとカー ムー ヤーラマン、ほぼ同じものではないかと思われます。
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豚足カーキーを朝から食べる人々
カームー屋にときどきカーキーという聞きなれない単語のメニューが出ています。
「これは是非、食べてみなければ」
と思って注文したところ、何のことはないただの豚足でした。
これはこれで悪くないですけどね。
カーキーの語源は豚足を意味する潮州語で、発音がカームーに似ていますがタイ語との関連はないようです。
それなら何も中国語を使わなくてもよさそうなものですが、タイの人たちは「足(ティン)」という語に不浄、汚れたイメージを持っていて料理にこの語を使いたがりません。
チェンライからの夜行バスが早朝バンコクに着き、都バスでホテルへ向かう途中、乗り換えで降りたところにこのカーキーをうず高く積んでいる店があったので2つ賀って食べたことがあります。
1つ15Bぐらいじゃなかったかな。
朝早くからよくこんなこってりしたものを食べる人がいるものだと感じ入ったことです。
カームーは豚足にあらず
カームーのことを「豚足」「煮込んだ豚の足」と書く人がいますが、カームー、豚足ではないです。
豚足の上の脚の部分を煮込んだのがカームーで、豚足は上に書いた通りカーキーといいますのでお間違えなきよう。
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