タイは酒のつまみに困る。とても困る。
つまみになるものが多すぎるのだ。
これほど多様でしかもおいしいつまみが
揃っている国は珍しいに違いない。
タイ人は何をつまみにしているのか
当のタイ人はどんなものをつまみにしているのだろう。
調べてみると、 順位に多少ばらつきがあるものの、だいたい以下のようなものが好まれているようだった。
10.タロー トード
揚げタロー。いきなり意外なランキング。
タローは魚肉を加工して細紐状にした菓子。日本で言えば糸柳焼きカマボコ、珍味の類。
もちろん袋を開けてそのまま食べられるのだけれど、一手間かけレンジでカリカリに焼くのがタイ式だ。

漢字風のデザイン。ずっと「T氏尺の」と読んでいた。
揚げタローはレンジ式よりさらにおいしさがアップした本格的おつまみ。
その分、調理と後片付けは面倒。料理店で注文するのがよさそうだ。
9.カオ キアップ
タピオカ澱粉(または米粉)と具材を練り合わせて揚げた小さなさくさくの揚げせんべい。
基本、塩、コショウの味付けなので酒のつまみとしても悪くない。
あまたのポテトチップを押さえてランク入りするとはこれまた予想外の奮闘。

タイの定番菓子カオキアップ クン。平たいエビセンみたいなもの。
カボチャ、トウモロコシ、にんじん、サツマイモ、紫芋、キノコ、エビ、魚、カニカマ、豚。様々な具材を練り込んだカオキアップがある。手間を厭わないのならスーパーで売られている生を自分で揚げるのも面白い。
8.ヤム ウンセン
春雨のヤム(ライム和え)。
タイ人にとって〈ヤム=酒〉らしく、酒席にはよくヤム料理が並べられる。
四角鞘豆のヤム、豚カマボコ(ムーヨー)のヤム、ホーイクレン(赤貝の類)のヤム、イカのヤム、肉のヤム、目玉焼きのヤム。確かにヤムというのは酒によく合う料理である。

家はしょっちゅうこいつが出てくる。酒を飲むときは遠慮したい。
ヤムウンセンとは関係がないのだけれど、以前、北部庶民の間では、赤貝に似たホーイクレンをゆがいたり焼いたりしたつまみが流行っていた。
内陸に暮らす北部人にとってホーイクレンはちょっとしたご馳走だったのだ。
7.フレーン フラーイ
何のことかお分かりであろうか。
そう、フレンチ フライのタイ語風発音。
初めてこの言葉を聞いたときはアルミホイールのことかと思ってしまった。
タイ英語はなかなかわかりづらい。日本英語も曲者だけどね。

おいしいけど腹が膨れて困る
マクドナルドが進出して以来、フライドポテトはタイでも当たり前の食べ物になった。
ケチャップではなく辛味の効いたソースプリックにつけて食べるのがタイ式である。
6.トゥア
豆。タイには日本以上に様々な豆やナッツ類が出回っている。
近年は日本風の枝豆もわりとポピュラーなつまみ。
料理店での定番はその場で揚げるカシューナッツである。

揚げた緑豆。数十年、つまみはこればかり。
ちなみにおじさんのつまみも豆。
揚げた挽き割り緑豆一筋30年だ。
5トム セーブ
トム(煮る)セーブ(うまい)は肉を煮込んだ酸っぱ辛いスープ。
直訳すれば「うま煮」なんだけど、ニュアンスからすると「(辛くて)ずきゅんとうめえ汁」じゃないかと思う。
具は本来、牛肉。タイの硬く癖のある牛肉もトムセーブにすればとてもおいしく頂ける。
豚だったらカドゥーク オーン。

東北料理の代表的スープ、トムセーブ。
スペアリブの軟骨部位を煮込んだトムセーブ。コリコリ感が気色いい。
酒のつまみ、というように日本ではつまめるものが主だけれど、タイではつまめない汁物もつまみにしてしまう。これが意外に悪くない。タイで感心したことの一つだ。
4.ムー マナオ
ライム豚。豚肉をさっと湯がき、酸っぱ辛いタレをかけて軽く和えたヤム風の料理。
添えられる冷やしたブロッコリーの芯がまたいいよね。
いったい誰がこの組み合わせを考えたのだろう。

ムーマナオではない
豚肉を湯がくさい、肉が熱湯に驚いたかのように色を変えることから、びっくり豚(ムー サドゥン)とも呼ばれるんじゃなかったかな。
3.ラーブ トード
酒飲みたちに揚げラーブが人気だというので、ちょうど冷蔵庫に転がっていたラーブを揚げてみたところ、まずくはないものの香辛料の香りが立ち過ぎて微妙な味だった。
あれ?もしかしてラーブトードってラーブイサーンの方?

間違って北部のラーブを揚げてしまった
一般に日本のみなさんがご存じのラーブは湯がいた挽肉をライムで和えたラーブイサーン(東北ラーブ)。
対し北部のラーブ、ラーブチンは叩いた(ラーブ)生肉(チン)に血と胆汁を混ぜ香辛料で和えた生ラーブ。
レシピを見るとやっぱりラーブイサーン系だった。
挽き豚肉にライム、煎り米、パクチーファランといったイサーンの3種の神器を加えて練り揚げる。察するに揚げネーム(酸肉)に近い感じかな。
これならうまそうだ。
2.クン チェー ナムプラー
剥きえびのナププラー浸け。
魚介類を生食する料理は珍しいタイでこれが上位に食い込んでくるとは驚き。
海から遠い北部でもけっこう食べられているものの、やはり南部の海辺の方がずっとおいしい。

タイらしい盛り付け
味はご想像通り。
生エビの甘くねっとりした身とナムプラーのうまみのコラボ。たまらんすよ。
1.エン コー カイ トード
エンは筋、コーは関節。直訳すれば鶏関節筋の揚げ物。
筋とあるけれど恐らく日本で鶏軟骨と呼ばれている部位。
コリコリ食感が酒の合間にとてもよいのだそうだ。
確かに液体を摂取し続けているとコリコリしたものを口に入れたくなる。
これでリフレッシュし、さらに酒がすすむ、というわけか。
無限ループに陥って仕舞いそうなつまみである。
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正直、意外なランキング結果に戸惑った。
冒頭で述べたようにつまみになるものが多すぎでタイ人自身も絞りきれないのかもしれない。
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